シラバスに疑問を呈した公立小学校の算数教師が解雇の危機に直面

「シラバスに疑問を呈した小学校の数学教師が解雇の危機に直面」

マレーシアの独立系オンラインメディア、フリーマレーシアトゥデイFMTとThe Vibeによると、クアラルンプールのゴンバックにある公立小学校で算数を教えるファドリ・サレー氏は、自身のFacebookに算数などの中核科目に費やす時間が短すぎ、シラバス全体をカバーするのに十分な時間がない、という投稿を行った結果、現在、解雇または降格の可能性に直面しているということです。

それまでも小学校の算数のシラバスが生徒にとって高度すぎるという懸念を繰り返し表明していたファドリ氏は、ソーシャルメディア上でこの問題について話すことを決める前に、あらゆる適切な手段を通じて(日本の文科省にあたる)教育省に連絡を取ったが、何の反応も得られなかったとFMTに語っています。

算数のシラバス(年間の授業内容と授業計画を説明したもの)が濃密すぎる上に高度であると述べたファドリ氏は、1クラスの生徒数が多すぎることに加えて、他にも多くの科目を学ばなければならないため、算数などのコア科目に費やす時間が短すぎるとも説明しています。

ファドリ氏は、30人を超える算数・数学の教師と職員が参加したゴンバク地区教育委員会での算数・数学のシラバス更新についての協議会中に、この問題について質問したことさえあり、その際、教育省のカリキュラム開発部門の職員でさえ、シラバスに関する彼の質問に答えることができなかったとも主張しています。

ファドリ氏の今回の投稿に対して、教育省から公務員規則に違反したとして告発、解雇または降格処分を示唆された上、Show Cause Letter(理由開示書)の提出を求められたとして、その理由開示書のコピーを自身のFacebookに投稿しています。

またファドリ氏は自分が真実を述べているだけにも関わらず、解雇したい理由を教育省に問い出しています。「なぜ教育省は私を解雇したいのでしょうか。私が真実を話しているからでしょうか?教育省は(私が述べている)真実に対処できいません。お世辞と褒め言葉だけを聞きたいのです」とも述べています。

FMTによれば、ファドリ氏の他にもソーシャルメディア上で不満を表明した教師は多くおり、これらの教師たちも、シラバスを全て終えることができない生徒たちに同情していました。特にコロナ禍の間、移動制限命令により教師と生徒はオンラインで授業を受けることを余儀なくされました。「他の何十人もの教師も不満を漏らしていますが、懲戒処分の脅威があるため黙っています」とファドリ氏は述べ、自分は教育システムを改善するために声を上げているだけだと説明しています。

教育省からの告発に関するファドリ氏の投稿は多くの反響を呼び、ソーシャルメディア上ではファドリ氏支持の声が日に日に増すと同時に、教育省がこのような思い切った行動をとったことを非難しました。

またファドリ氏が教育省から告発された事を伝える投稿を行うと、ラジ・ジディン教育相はファドリ氏にに会って直接フィードバックを得たいとして、「あなたが提起したこの問題について、私はもっと知りたいと思っています。時間があればあいましょう、ファドリ先生。」とFacebook上に投稿してます。

しかしファドリ氏は、過去にラジ教育相の注意を引くために行った様々な試みが無視された後、突然、自分にFacebookで連絡するというラジ氏の行動に疑問を呈しています。「なぜでしょう?これは国民の目覚めによるものだと思います。国民が怒っているのは、この問題が彼らの子供たちに関係しているからです。」

The Vibeは「人々の怒りを弄んではならない。政府の崩壊を引き起こす可能性さえあります。国民が立ち上がろうとしています。そしておそらくこれが、ラジ教育奏がすぐに私に会おうと反応した理由でしょう。」と分析するファドリ氏の発言を掲載しています。その一方でファドリ氏はこれが政治問題化することは望んでいないとし、政治家や政党に警告しています。

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ともすれば揶揄されがちな日本の「ゆとり教育」とは対極とも言えるマレーシアの教育は、日本で言えば昭和の時代の「詰め込み教育」を彷彿させるヘビーなカリキュラムであることは、一般の書店でも手に入るSPM(中等教育修了証、英国系インターナショナルスクールのIGCSEに該当)やSTPM(上級中等教育修了証)取得のための国家試験の問題集などの内容を見てもわかります。また昨年で廃止され小学校6年生で全員が受験するUPSR(小学校学力到達度試験)、2014年に廃止された中学3年生で全員が受験するPMR(前期中等教育評価試験)など、様々な国家試験で振り分けられ、選別されるのがこの国の教育スタイルです。その是非は別として、日本に負けず劣らず多くの塾(Tuition Centre)の看板が目につくのも、この記事のファドリ氏が述べるように、学校での授業だけでは国家試験で良い成績を取り、自分が望む進路を選択する権利を得ることが難しいからに他なりません。

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